どんさんの日記

ちょっと昔の話からリアルタイムな話まで各種雑多な事をつらつら書いています

最長不倒距離

こんなワゴンタクシー乗務の時代を経て数年後に故あって一般車に乗ることになりました。これで晴れて流し営業も出来るようにはなったのですが…やはり仕事の中心は慣れた羽田空港になるものでw

当時も最近も同じように言われるのは

「流し営業を基本に」

「付け待ちはしない」

「待ち時間の長い乗り場は付けない」

「羽田?サボッテンジャネーヨ!!」

などと各社管理職の皆さんから嫌われている羽田空港なのですが、付け待ちも使いようだと私は考えてます。

まあ…ここらへんの営業手法の話は後ほど別エントリーで…(^.^)

 

そんなわけで当時から羽田大好きどんさんは一般車になっても羽田空港に行っていたわけですが…ここで一つ物語が生まれます。

時は平成初頭のGW。5/3です。

 

 

この日も出庫早々羽田空港へ。GWなので逆に早く出て羽田で回数やれればいいな、と普段は出ない6:00に出庫。

羽田到着が7:00。待機プールにはまだ数えるほどしか車がいない。待ちも15分くらい。これはいいぞ、と勇んで第一乗り場へ配車。で、大師。

まあまあ…とすかさず戻るとまた車がいない。すぐに第一乗り場。これが五反田。うーん…近距離じゃないけどこれはなぁ…と思いながらもまた羽田へ。

9:00前到着。プールに一杯の車wwB勤の車が押し寄せて来たのかwwwまあそれでも今日は羽田しかやらん!!と決めてるのでプール入構待機列へ並ぶ。しかし入構までに30分。全く流れないwつーか車多すぎなんだよ!!などとブツクサ言いながら結局1:30かかって第二乗り場へ配車。

するとそこにはなかなかの長さの乗車待ち列が。列を目で追っていくと自分に乗るのは中年のサラリーマンのように見える。あの人ならそこそこ行くかな…いや、世田谷ってのもあるな…などと考えていたら前方の一組の観光客がワゴンに流される。これで一人ずれたぞ…ん?後ろは…んん???白装束に金色の袈裟をかけたご年配のお坊さんとその弟子のような若い男子が数人。…うーん…池上??鶴見??…うーん(>_<)そんな事考えて見ていると乗り場のポーターがその若い男子の一人とひとしきり話した後、空になったワゴン車乗り場を見た後こっちを見て一頷きwそして乗り場へ。

「○○さん、5人乗りだよね?」

「はい、そうですよ」

「じゃあこちら5人お願いします」

来たのはやはりさっきの御一行様。トランクに5人分の荷物を目一杯入れ、前に二人、後ろに三人乗車のぎゅうぎゅう詰めでドアを閉める。

「それでは…どちらにまいりますか?」

…無言(笑)

「えーと…」「住職!」「お、そうじゃった」「行先は住職しか知らないのですからお伝えしていただかないと」

一気に喋るから訳が分からないwww

「沼津の○○寺まで」

「え!?沼津ですか???」

「沼津の駅から富士山の方に登って行くと突き当たりにあるんだがわからないか?」

そんなん知るわけないですwwwww

いきなり沼津って言われて面食らってる所にそんな地元のタクシーに言うような事言われてもwwwww

住所が分からないかと聞いても知らないとの事で、とりあえず沼津駅に行く事にして出発。

(ちなみにこの日はフロントベンチシートコラム4MTのセドリックです。それにぎゅうぎゅう詰め…(>_<))

さて…ルートは全く分からないから好きなところを通っていい、とは言われても時間は11時過ぎ、東名は御殿場先頭に30kmの渋滞、あんなのにはまったら終わるwと考え…あり得ないルートを選択。

(東名の2ルート化はまだまだ先の話ですw御殿場渋滞が当たり前の頃ですねw)

羽田から横羽線へ、三ツ沢から新道でこの段階で東名がいくらか空いていたら保土ヶ谷バイパスへ。空いてなかったら…新道から西湘バイパス、箱根新道で箱根越えで行けば混んでない!と謎の確信を持って走り始めるw

三ツ沢までは全く問題なし。新保土ヶ谷の手前の渋滞表示は…35kmになってる(>_<)…これは行くしかない…思いきりがいいんだか悪いんだかwそのまま直進してしまったww

そんなこんなをドライバーは考えているとも知れず、御一行様はお話しで盛り上がり中wこちらにも会話を振ってくるので相槌を打ちながらあれこれ聞くと…

御一行様は皆さん青森の方でお寺は違うが住職の付き人をしている

住職は特殊な能力を持っていて空中浮遊が出来る

住職に願い事をお願いすればなんでも叶う

…えーと、似たような能力を持った人が数年後に現れるんですがwwwww

まあ、付き人さんか言うにはすごい住職なんだそうでw

「では今日お会いできたのも運命ですかね?」

と聞くと

「そりゃ新幹線のおかげだぞ。グリーン車取れなかったからタクシー乗ったんだ。」

お、おう…ww

普段は新幹線で沼津まで行くそうで。でも今日はGWで取れなかったらしくタクシーで行くと住職が言い出したのでこうなった、と付き人さん。ある意味付き人さんも大変w

原宿の渋滞を越え、藤沢橋を越え、酒匂川を渡るあたりまでは車も多かったがその先は至って快適に走る。時間はここらへんで14時くらい。東名の渋滞はどうなってるのかぁ…と考えながら小田原へ。

(この当時は移動体通信が整備される以前なので交通情報はラジオと数少ない情報表示板だけが頼りでした)

箱根口辺りはさすがに混んでいたものの箱根新道に入るとガラガラ。そしてここからが大変…どう考えても重すぎるこの車、4速に入れると登らない…3速で目一杯アクセル踏んでも60kmがやっと。そしてエンジンの唸る事wこの頃になると御一行様も疲れたのか皆さん眠っていたけど、狭い車内で一人箱根の山と格闘していた私www

やがて登りきり今度は下り。幸い箱根から西は雨が降っていた。カラカラの良い天気で下りだと今度はブレーキが焼けるんじゃないかと心配していたがそれは大丈夫なよう。下りもスピードを抑えめにゆるゆる降りていく。

やがて三島の街が近づいてくる。国道1号は夕方の渋滞が始まっていた。渋滞の中、標識を見落とさないように走って行くと右に沼津駅の表示が。ここを曲がり真っ直ぐ行くとポンと沼津駅に出た。

沼津駅まで来ましたよー。ここから見てわかりますか?」

付き人さんが目を覚ます。

「…あー…あ、住職!!沼津駅ですよ!!」

…起きないw

何度声かけても起きないww

「運転手さん。ここで下りて地元のタクシーに乗り換えますかね?」

「それかいいかもですね…」

と言うわけで駅前のタクシー乗り場の先で車を停めて地元のタクシーにお願いしよう…とタクシー乗り場を見ると空車0wそれどころか乗車待ち列がとんでもない長さwwこりゃまいったな…と思っていたら車からみんなガヤガヤ降りてきた。

「運転手さん、後はこっちの車に乗るから大丈夫だ」

いつの間にか起きた住職がこちらに近づきながらそう言ってくる。

「大丈夫ですか?でもタクシーいないですよ?」

「迎えに来てもらう」

あ、そういうことかw

メーターで36000円ちょっと、有料代を入れて38000円位だったが40000円でおつりはいらないと言う。

「なかなか楽しかったぞ。ありがとう。」

と言うと挙げたトランクから荷物を出して駅構内に入っていった…

 

 

と言うわけでこれが私のタクシードライバーとして最長不倒距離仕事です。(運賃的にこれ以上のものはあるものの関東地方から出たのはこれが最初で最後です)

まあ…お客様もかなりインパクトのある方々でw今となってはどこのどなたかも分かりようもないのですが、もうちょっとどのような方だったのか知りたかったな…と思い出す度に考えます(笑)

(ちなみに帰りの東名は渋滞もなく19時過ぎには羽田に戻ってました。)